熱があるのは、体が戦っているということ
少々過激なタイトルに思われますが、しかし、それほど的はずれではありません。
私もそうでしたが、多くの人は、熱が出たら「熱をさげる」「解熱する」ということが当たり前であると考えています。
「熱が出たら解熱剤を使う」というのは昔からの常識であったと思われます。
私も日頃、熱の出た患者さんを診察していると、
患者さんからは決まって、
「解熱剤を下さい」といわれます。
発熱=解熱剤
とは、今でも多くの人が考えていることではないでしょうか。
そもそも、人はなぜ熱を出すのでしょうか?
ここでは、わかりやすく風邪の時の体の反応から「熱」というものを考えてみたいと思います。
実は、熱が出るということは体にとって、決して悪いものではないのです。
たとえばウイルスや細菌が体内に入ったときに、
体の免疫機能が反応して、戦闘態勢に入る準備をするのです。
その時に、体の免疫を担う細胞である白血球が出す物質が、
体全体の体温を上げる作用があるのです。
熱が出るということは、体が戦闘態勢に入ったという証拠です。
そして、体全体で侵入したウイルスや細菌と戦うのです。
そういう意味では、発熱というのは、体の防衛機能の一つなのです。
体全体が熱をもつことで、体に侵入したウイルスや細菌を弱らせたり死滅させることができます。
ウイルスや細菌の種類によっては、体が熱をもつだけで死滅させることができます。
逆に、一部の風邪やインフルエンザのウイルスは、低温を好みます。
たとえば、インフルエンザなどは冬に流行しますが、
それは気温が低くなって、ウイルスが活動しやすくなってきているからなのです。
高熱が出れば、体はつらくなりますが、その高熱の体が、ウイルスや細菌との戦いに有利に働くのです。
ところが、多くの人は、熱が出たらすぐに解熱剤を飲んで、熱を下げようとします。
氷を使って体を冷やしたりして体温を下げようとします。
解熱剤などで体温を下げてしまいますと、
ウイルスや細菌と戦う体の戦闘能力を低下させてしまいます。
そして、病気が治るまで時間がかかってしまいます。
つまり、熱が出たからといって、安易に解熱剤を使用しない方がいいのです。
熱を下げない方が、病気の治りも早くなるといえます。
特に、子供の場合は高熱が出やすいです。
40度とか平気ででます。その割には、元気である場合が多いです。
そんな時も、積極的に解熱剤を使う必要はありません。
体が、ウイルスや細菌と戦っているのです。
では、解熱剤はどのような場合に使用すればいいのでしょうか?
熱が出るだけで、頭痛や関節痛、だるさ、下痢などの症状が出ます。
そのような症状があるときは、熱を下げることで、症状も軽くなります。
子供は、機嫌が悪くなったり、ぐったりしてしまいます。
そのような場合には、解熱剤を使うといいでしょう。
つまり、体が熱でつらいときには、解熱剤を使った方が楽になります。
そのようなつらい症状がなく、ただ熱だけが出たときなどは積極的に解熱したりせずに、
自然に体温が下がるのを待つようにしましょう。
そして、もう一つ大切なことは、熱が出たらできるだけ水分を摂取することです。
体は熱を逃がそうと汗をかいたりして、体から熱とともに水分を出す方向に働きます。
そして、脱水傾向になります。
体の水分の割合が減ると、その分、熱が体にこもります。
そして、また熱が上昇するという悪循環に陥ります。
ですので、熱が出たら、こまめに水分を飲むようにします。
子供であれば、こまめに少しづつでもいいので、水分を与えましょう。
汗などとともに熱が体の外に放出され、徐々に熱が下がってきます。
それが、自然な解熱なのです。
覚えて頂きたいことは、熱は、体にとって決して悪いことばかりではありません。
「熱が出たから下げなければ」とか、「解熱剤を飲めは早く治る」ということではないのです。
熱が上がるといのは、体の抵抗力を高める反応であるということを理解した上で、今後は、解熱剤の使用を考えてみてはいかがでしょうか。